第7話 職業訓練所(ブルー・オーシャンの光の中で)

ミーターの大冒険 余白

第7話ミーターの大冒険・余白

第7話 職業訓練所(ブルー・オーシャンの光の中で)

セーシェル群島――太古地球の温暖な大洋に点在する島々の一つ。銀河の中心から遥か離れたこの地で、今なお碧い海が悠然とその姿を保っていた。再植民された地球の再生は、ここから始まるのかもしれなかった。

波音が遠く響く海辺の会議室。半透明のシリカ・パネル越しに差し込む陽光が、室内の全員を青く照らしていた。バーチャル看護士、ヴァレリー・バーは、ジスカルド・ハリスに静かに視線を向けた。地球再生評議会の特別顧問、そして「失業者・難民問題」の総括責任者でもある男である。

「ハリスさん、そのお顔つき . . . 何か策があるのですね?」
ヴァレリーの口元にかすかな笑みが浮かぶ。

ハリスは短くうなずき、深く椅子にもたれた。
「そうだ、大丈夫だ。十分に満足のいく結果を出せるさ」

「さすがですこと。まるで、ミーター様のお株を奪う勢いですね。信頼しております。ぜひともその戦略を―ブルー・オーシャン理論とやらをお聞かせください」

ハリスは思わず笑った。
「察しが早いな。俺がこの島にブルー・オーシャンを携えて来たと見抜いていたとは . . . さて、話そう。だがまず、海の話から始めようか」

窓の外に広がるコバルトブルーの海原に目をやりながら、彼は語り出す。
「この海だ。君も気づいているだろう―魚がいないんだ」

「ええ、綺麗ではありますが、空っぽですね。太古の地球には、海洋資源が溢れていました。ハリスさんは、そこから復興されるおつもりなのですね?」

「その通り。鍵は〈アルファ〉にある。太古地球の海洋生態系をすべて保持する惑星――そこのモノリー長老に連絡を取ってある。彼らが管理してきた全種の海洋生物を、ここへ戻す手筈だ。地球の海に命を戻す。それがブルー・オーシャン理論の第一歩さ」

ヴァレリーは目を細めた。
「ですが、海で成功しても、陸の人間社会ではどうでしょう?」

「理屈は同じだ。人間の世界にも“魚を住まわせる”方法がある」

「移民・難民の数をご存知で? 銀河中から押し寄せる彼らを全て、漁業や観光業で吸収するには……数が合いませんわ」

「だからこそブルー・オーシャン理論なのさ。人が手をつけていない需要を創出する。レッドオーシャン―競争と限界に満ちた社会から抜け出し、未知の価値空間を拓くために」

「一から教育しても、それが即座に新産業になるとは思えません。時間がかかります」

「もし一人ひとりに、独自の特殊技能が備わるとしたら?」

「それは . . . 誇大妄想、というのでは?」

「そう思うだろうな。だが、俺には秘策がある。人を特殊技能者に変える鍵―それが精神感応力の訓練だ。第二ファウンデーションを活用する」

「まあ、ハリ・セルダンの遺産 . . . !」

「そうだ。彼ら数千人は、数万人規模の指導者を育てる。そしてその指導者が、それぞれ何千人という市民を導く。一人一人に適した訓練を施し、唯一無二の職能を与える。才能の多様性は、社会の多様性となり、新たな価値創造を無限に生む」

「まるで新銀河文明の設計図ですね . . . 完全なる再出発。ミーター様の理論とも響き合う」

「その通りだ、ヴァレリー君。これはミーターと共に編み出した『宇宙潮流』理論の実践版だ。ここ地球のセーシェルに、中央施設を設立する。ブルー・オーシャンはここから、銀河全域に広がっていく」

ヴァレリーは席を立ち、窓辺に寄って光に包まれた海を見つめた。

「 . . . このブルーの光 . . . 未来が、まるで手の届くところにあるようですわ」

彼女の横顔を見つめながら、ハリスは静かに言った。
「そしてその未来の先に―我々の“本当の海”がある。誰もまだ泳いだことのない海がな」

※《ミーターの大冒険》および《ファウンデーションの夢》をもっと知りたい方はこちら:
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